下原敏彦の著作


『ドストエフスキーを読みつづけて』(2011)に寄せられた感想
(敬称略・五十音順)

発行当時にいただたご感想です。私信ではありますが、私どもにとってはありがたい思い出であるとともに貴重な記録です。ここに感謝を込めて掲載させていただきした。(下原敏彦・康子 2019年6月1日) 


芦川進一(ドストエフスキー研究者)

『ドストエフスキーを読みつづけて』をいただき有難うございました。これからゆっくり拝読させていただきます。『山脈はるかに』については心を動かされました。木下恵介の『二十四の瞳』が大好きなので、改めてその伊那谷の復活版としても読め、涙が出ました。ぜひ‘伊那谷シリーズ’をお書きください。お二人の足を地に着けた生き方とドストエフスキーとの取り組みには心から敬意を感じさせられます。どうかこれからも頑張ってください。私の方はカラマーゾフ論に向けてひたすらテキスト・クリティークを続けています。夏までには雑誌連載を土台にしたソーニャ・イワン論が出版できそうです。お互いがんばりましょう。


井桁貞義(ロシア文学者・早稲田大学文学学術院教授)

このたびは御著書『ドストエフスキーを読みつづけて』をお送り下さいまして誠にありがとうございます。「会」に出ていたころがなつかしく思い出されます。私にとって「会」は社会を勉強する場でした。それからペレストロイカの時には現代ロシア文化を、その後は露和・和露辞典、異文化コミュニケーション論と動いてきました。長い長い間、お二人が「全作品を読む会」を主宰されたことに心より敬意を表します。


岩浅武久(ロシア文学者)

先日はお二人の御著書『ドストエフスキーを読みつづけて』をお送りいただきありがとうございました。下原さんの文章は『ドストエフスキーを読みながら』に続く豊富な内容のもので、康子さんの文章もまた、その後の職場での思い出を映し出しつつ『パンドラ』期の懐かしい「小説」を含んでいて、懐かしく読ませていただいています。「読書会通信」を拝見して40年前の「岩浅武久」氏の書いた報告が再録されているのに驚きました。

新著の「栞」に案内されてインターネット「土壌館創作道場」の「下原ゼミ通信」もお訪ねしました。ドーデーの「最後の授業」は、私も「文章表現演習」の授業で取り上げたことがありますが、アルザスの歴史を背景に見ながら小説を読むとき、これを「敗戦国の悲哀と愛国心を描いた名作」と評してよいのか疑問に思います。仮にアルザスを朝鮮に、フランス語を日本語に置き換えてみると、作品の複雑さが見えてくるように思えるのですが、いかがでしょうか。


小田島雄志(英文学者・演劇評論家・東京芸術劇場前館長)

『ドストエフスキーを読みつづけて』ご出版おめでとうございます。そしてわざわざお贈りいただきありがとうございます。たしか芸術劇場会議室を使っていただいていたのでしたね。小生も今は名誉館長になってしまいましたが、若いころ夢中だったD君に再会するうれしいきっかけを与えられた思いです。楽しみに拝読します。


亀山郁夫(東京外語大学学長)

本日、『ドストエフスキーを読みつづけて』を拝受しました。とてもうれしく思いました。じつは、3月末にすでに購入し、先週、読み上げたばかりでした。ほんとうに偶然です。

ドストエフスキーの全作品を読む会が5サイクルめに入ったとのこと、驚くばかりです。文章から草創期の活動の輝きが伝わってきて、よい時代があったと痛感しました。清水正さんをめぐるエッセーをとても面白く読みました(「爆発で誕生する清水批評」)彼のイマジネーションの奥行にはいつも感嘆させられてきました。

私も、先日、なんとか『悪霊』の第二巻を出すことができましたが、江川訳の格調の高さにはとても及ばなかった感じです。この年になりながら、彼の40代後半の仕事に追いつけないというのは、やはり能力のレベルが違うからでしょうね。今は第三部の4章を終えようとしているところです。毎日規則正しい生活を送っているせいか、不思議なことに、自分としてはめずらしくかなりハイペースが維持できています。秋口の刊行を予定しています。これからもどうぞよろしく。いつかまた、会に出席できる日が来るといいなと思っています。


佐々木美代子(ドストエーフスキイの会)

先日はお二人の長年月に亘るドストエフスキー関連論集をまとめた御著書をお贈りくださり、本当にありがとうございました。私には待望の書でした。内容がたっぷりあるので、すぐには御礼の手紙を記しませんでしたが、何篇か読ませていただき、完読ではない今、やはりお手紙したくなりました。お二人は全く異質のアプローチの仕方で、でも各々は一貫性がある捉え方で、年月をかけて一人の作家に敬愛と関心と評価を与え続けておられ、その揺らぎのない姿勢が素晴らしく、好もしく受け取れました。読みながら、新たに教わることも多々あり、各々の視点や掘り下げる手法、その内容が刺激的で興味深く、面白く感じました。十年後か二十年後くらいに、この書の続篇が出る可能性もあり、ですね。

「『バーデン・バーデンの夏』を読む」の書評、初めて読ませていただきました。(私の本への言及、感謝いたします)実は私もあの小説を強い関心を持って読んだのでした。同じ頃、トーマス・マンの『ヨゼフとその兄弟たち』を読み進めていたので、二人の作家のユダヤ人観の天と地ほどの相違に衝撃を受けました。マンはヒトラーを一貫して当初から批判しつづけ、妻カーチャがユダヤ人でもあり、アメリカに亡命し、ユダヤ人大虐殺が行われている時に「ユダヤ人への敬愛を示すために」あの大長編を執筆しつづけたのでした。

ドストエフスキーの反ユダヤ主義、ユダヤ人嫌いは何に由来していたのでしょうか。そんな風潮が西欧を支配していた、それに単純に乗っていただけなのでしょうか。残念ながら、そんな偏見もドストエフスキーの一側面として受け止めるしかないのでしょうか。この両者のユダヤ人観についていつかまとめてみたいと思っているところです。

康子さんのテーマに対して、私はとても関心が持てます。マンもドストエフスキーの「病者」であるところに深い共感を示しており「病気=精神」と捉えています。お仕事で病者と関わってこられ、そんな体験を通して、ご自身のテーマを見出し、考察されている姿勢はとても良いと思い、羨ましいです。実り豊かなお二人の著書の出版、本当におめでとうございます。


杉村隆(基礎医学研究者・国立がん研究センター名誉総長)

御著書お送りいただき有難う存じました。『罪と罰』等、目にすぐ見える本棚にありながら「ド」も読んでいないので恥じ入りました。人間とは摩訶不思議なものと震災以後思っています。天文学・宇宙に比べると。ご主人様によろしく


平哲夫(ドストエーフスキイ全作品を読む会)

この度は『ドストエフスキーを読みつづけて』をお送りいただき誠にありがとうございました。小生、心臓と格闘中です。何としても戦い抜いてまた「読書会」に参加致したく念じています。


田中幸治(ドストエーフスキイの会)

『ドストエフスキーを読みつづけて』刊行、おめでとうございます。ご本を頂戴した御礼を申し上げます。私が読んだ康子さんの最初の小説が「星は流れなかった」でありました。伊東さんの小説は「父の死」でした。諏訪湖を望むお墓に行きましたから忘れませんね。私は86歳になります。気持をひきしめて、一言録と題して短文を書いております。私の師、米川正夫先生の伝えたかったものを伝えたいです。


樋野興夫(順天堂大学医学部病理学教授・「がん哲学外来」提唱者)

素晴らしい本ですね!感謝申し上げます。


日野原重明(医師・聖路加国際病院理事長)

このたびは御著書『ドストエフスキーを読みつづけて』をご寄贈いただき厚く御礼いたします。まだ一部しか読んでおりませんが、なかなかの力作と思っています。長年ドストエフスキーの作品を愛読してきた者としてこの本を戴き嬉しく思います。


冷牟田幸子(ドストエーフスキイの会)

この度は貴重なご夫妻のご著書をお送りいただきましてありがとうございました。お二人の40年はとりもなおさず「会」の40年、しかも「会」を支える運営委員としての40年で、会員の一人として、お二人に心より御礼申し上げます。すぐれた懐かしい文章が一同に会していて、長きに亘ってお仕事の傍らよくお書きになったな、というのが率直な感想です。改めて読ませていただきます。これからもご健康に留意されて「会」と共に歩み続けられますようにお祈りしお願いもいたします。


広井良典(千葉大学法経学部総合政策科教授)

このたびはすばらしい御著書をお送りいただき誠にありがとうございます。ドストエフスキーの作品を通じてケアを考えるという印象深い文章をはじめ、すばらしい内容の御著書との関連の資料をいただき深く感謝申し上げます。がんセンターの患者図書室の充実が想像されます。まずは取り急ぎの御礼と一報とさせていただく次第です。


横井登(友人)

この度は貴い著作『ドストエフスキーを読みつづけて』をお届けいただき誠に有難うございました。浅学の身なれば到底深い読解までは至らないまでもなんとか戸惑いながらも読ませていただきました。私こと終戦後に関東軍現役兵としてソビエト連邦に抑留され、シベリアにて4年間を過ごして参りましただけに当時のシベリア地域の自然や人々の暮らしぶりが思い出され、懐かしく読ませていただきました。