ドストエーフスキイ全作品を読む会 読書会通信 No.96 発行:2006.6.1



大盛会だった亀山郁夫氏の講演会


下原 敏彦

4月8日(土)に開かれた亀山郁夫氏の講演会は、会場の中会議室がほぼ埋まる出席者がありました。大盛会でした。講演は、氏のドストエフスキー体験ともいえる青春時代のほろ苦い思い出から、最近の『悪霊』論に至るまで多岐にわたる内容でした。会場の熱気は懇親会でさらに上昇、三次会まで続きました。活気あるドストエフスキー祭でした。亀山先生には最後までお付合いいただきありがとうございました。

なお、亀山氏は当日の感想をご自身のブログにこう書かれていました。一部転載させていただき紹介します。


亀山氏のブログより

「ドストエーフスキイの会」「全作品を読む会」主催の講演会に講師として招かれ、約1時間半、「《父殺》しの深層」というタイトルで話をした。残り45分ほどが、質疑応答にあてられた。充実した時間だった。会場には、ざっと見渡したところ、約70名ほどの人たちが集まってくれた。今回の講演会が実現する運びとなった理由は、昨年6月にみすずから出た『《悪霊》神になりたかった男』でぼくが打ち出したマトリョーシャ=マゾヒスト説。「ドストエーフスキイの会」の何人かの方から、強い疑義が出され、会内部でも大きな議論になって、それなら、著者にご登場いただこうという話になったらしい。幹事役の福井勝也氏さんの名前は、もう、随分前から存じ上げていたし、前々からすばらしい書き手だと思っていたので、ぼく自身、喜んでお引き受けすることにした。

講演を聴きにきてくださった方々には、ぜひ懇親会でもお会いしたかった。池袋西口ライオンの地下一階が、ドストエフスキーで灼熱し、ほとんど、地上に吹き上げかねない勢いだったのだ。ここでは、敢えてその日の出来事については書かない。ともかく、ぼくたちだけでなく、21世紀まで生き延びたドストエフスキー自身にとっても、今日が一番、幸せな一日だったのではないか、とふと思ったりした。長い人生、学会にしろ、シンポジウムにしろ、ドストエフスキーがこれだけ熱っぽく語られた日はいまもって記憶がない。今年35年を迎えた「ドストエーフスキイの会」「全作品を読む会」にこの熱が持続してきたとするなら、それはもはや熱病ではない。ムラカミさん、今や世界のアイドルとなったあなたとはまるで異次元の地下室にこそ、ほんものの文学の熱はあるのですよ。


参加者のなかには、亀山氏の教え子の皆さんも多数いらっしゃいました。最初の教え子の方、N.T.さんから、講演会の感想や三次会でのお写真をいただきました。ありがとうございました。感想部分を紹介させていただきます。


私は、卒業論文で『白痴』をやったもので、今回講演会に参加して非常に驚き、また感激いたしました。こんなにドストエフスキーに熱い人たちがいるのだ。本当にすごいの一言でした。卒業後、ロシア関係の貿易をしており、ロシア人と会話する機会が日本人と話すより多いので、ドストエフスキーの話など卒業後することもありませんでした。青春時代にタイムスリップしたようでした。これを機会にまた私もドストエフスキーを再読しようと思っております。ますますの会の発展を祈っております。(平成18年4月9日 N.T.